心のケア・カウンセリングスキルとしてのNLP
世の中にはたくさんの職業がありますが、その中でもハードなイメージがあるのが看護師や介護士ではないでしょうか。これらの職業は、これからますます少子高齢化が進み、長寿があたりまえとなった現代において、助けを求める人たちの力になる、とても必要とされ、やりがいのある仕事とも言えます。しかし一方で、ミスが許されない処置、患者さんや患者さんの家族とのコミュニケーション、そして同僚との人間関係に気を遣ったり、不規則な昼夜の勤務にあたったりと、心身ともに大きなストレスとなる職業といえるかもしれません。
NLPはこのようなストレス対処に役立つスキルがたくさんありますが、今日はそれに加えて、様々な場面で非言語コミュニケーションを求められる看護師や介護士の方がNLPを身につけることにより、患者さんに対してはもちろん、自分の心のケアにも、そしてカウンセリングスキルとして、たくさんのメリットがあるということをお伝えしたいと思います。
相手の本心をさぐる
NLPの重要なスキルにキャリブレーションというものがあります。キャリブレーション(Calibration)は、辞書でひくと「計器の目盛りを正しく調整すること」「較正(こうせい)」などと出てきますが、NLPでは相手の心理状態を非言語の領域で認識することを指し、簡易には「観察」とも言います。
例えば患者さんに「具合はいかがですか?」と尋ねたときに、覇気のある声で「大丈夫です!」と答える人もいれば、自信なさそうに「大丈夫です・・」と答える人もいるでしょう。この時に同じ「大丈夫です」という言葉を使っているにも関わらず、後者では何か言葉どおりに受け止めてはならない要素があるように感じられます。
また、「お薬を飲みましたか?」と尋ねて、しっかりと飲んだと伝えてくれればよいのですが、どこか曖昧で目線を合わさずに答えた場合、それがその患者さんにとって必要不可欠なお薬ならば、大事に至る前に本当に服用したかを確認する必要があります。
上記の例程度であれば、多くを学ばずとも気づきやすいでしょうが、NLPのキャリブレーションの技術を身につけると、言葉の裏にある本心を、声の抑揚や大きさ、身振りや視線の向きなど、言葉以外の情報から読み解くことが容易になるため、相手の些細な変化に気づくことも可能となります。
不安や絶望を軽減する
入院しているような病が長引く患者さんは、体調のことやお金のこと、仕事のことに不安を抱えていたり、重篤の場合は絶望に近い気持ちを抱えていたりする方もいるでしょう。NLPは患者さんの病気を治すことはできませんが、患者さんの不安を少しでもやわらげ、マイナス思考からプラス思考へ誘導していくことができます。
「このままずっとよくならないんだ・・」と不安を抱えている方には、なんとか元気になってもらいたくて、「大丈夫!そんなことはない、元気を出して!」と声を掛けたくなりますよね。この患者さんが本当によくならないと信じ込んでいる場合、このような励ましの言葉すら、その人を否定していると捉えられかねません。
そのようなとき、NLPでは、その患者さんがよくならないと思っていることを否定せず、「よくならないと思っているんですね」と寄り添ったうえで、患者さんの心の中で起きている事を質問によって掘り下げていくメタモデルや、相手の無意識に言葉を投げかけるミルトンモデルなどのアプローチを用いると、患者さんとの信頼関係が築け、また、患者さんも抵抗なく気づきを得て、前向きな考え方にシフトしていくことができるようになります。
自身のメンタルもNLPでケア
不安が募って精神的にも肉体的にもつらい状況にある患者さんや、看病や介護で疲弊している家族の方とコミュニケーションを取る場面では、時にきつい言葉を投げかけられたりすることもあるでしょう。また、女性の多い職場においては女性同士の難しい人間関係もあるかもしれません。シフト制で不規則になりがちな生活や睡眠不足なども相まって、看護師や介護士の方自身がストレスで参ってしまうこともあると思います。
感情のコントロールやセルフマネジメントに有用なNLPのスキルは、例えば「メタモデル」「ポジションチェンジ」「リフレーミング」などがあります。自分自身がネガティブな思考に陥ったときには、自分自身に対してメタモデルの質問技法を用いることによって、その思考を論理的に検証して様々な見方ができるようになります。ポジションチェンジは相手の立場で物事を見るという客観的な視点を持つメソッド、リフレーミングは物事の捉え方の幅を広げてみたり変えたりするメソッドですが、いずれも今起きていることが、唯一の解釈または考え方ではないと気づきを与えてくれます。
まとめ
コミュニケーションの神髄はまず相手を知ることからと言いますが、相手の様子がいつもと違うことや、相手の身振り手振りのクセ、目線などを体系的に解析したのがNLPのキャリブレーションです。相手をよく観察することで初めてコミュニケーションのキャッチボールができるのです。
他人とのコミュニケーションだけでなく、自分自身を客観的に見てよく観察し、自分の思考とコミュニケーションをとることも大切です。それがセルフマネジメントや感情コントロール、そしてストレスコーピング、心のケアに役に立つのです。
NLPを学び、周りの方とのコミュニケーションも、そして自分とのコミュニケーションも円滑にしていきましょう。
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